AI時代に備える理学療法士の働き方:AIがもたらす変革と役割分担とは?
理学療法学科
最近は、AIに関する話題を目にしない日はないほど、さまざまな分野でAIが取り上げられています。医療分野も例外ではなく、今後はAIの導入が進むことが予想されます。
そこで今回は、理学療法士として働く私が、AIが今後どのように理学療法士の業務に関わってくるのかについて、考えをお伝えしたいと思います。
ちなみに、私は日常的に生成AI(ChatGPT)を活用しており、教員としての業務でも非常に助けられています。普段からAIを利用しているからこそ、今後の変化について具体的なイメージを持つことができています。
理学療法士の未来とAIの影響について興味がある方は、ぜひご覧ください。
AIの発展により予測される理学療法士の仕事の変化
AIの進化により、これまで経験に基づいて行われていたリハビリテーションが、よりデータに基づいたものへと移行する可能性があります。現在でもデータを活用したリハビリは行われていますが、やはり理学療法士の経験値の差が大きく影響します。
理学療法士の専門性のひとつに「動作分析」があります。患者さんの歩行や起き上がりなどの動作を観察し、どこに問題があるのかを分析してリハビリプランを立てる作業です。しかし、1年目の理学療法士と10年目のベテランでは、その分析力に大きな差があり、その結果、提供されるリハビリにも違いが出てしまいます。
では、ここにAIが導入されたらどうでしょうか?
患者さんの動作をAIに解析させ、ビッグデータをもとに最適なリハビリプログラムを提案してもらうことができます。AIにとっては、これがまさに得意分野であり、瞬時に結果を出すことができます。
その結果、新人の理学療法士でも、ベテランと同じレベルのリハビリプログラムを提供できる未来が考えられます。AIが得意とする領域は、どんどんAIに任せることで、現場の効率化が進むでしょう。
このように、従来理学療法士の専門領域とされていた部分がAIによってサポートされる時代が来るかもしれません。
とはいえ、AIが全ての業務を奪うわけではありません。理学療法士にしかできない仕事はたくさんありますので、そこは安心してください。人間を相手にするリハビリ職において、理学療法士が不要になることはないと私は考えています。
みなさんはロボットにリハビリを受けたり、慰めてもらいたいと感じますか?
この問いこそ、理学療法士の役割を考える上で重要な要素だと思います。
リハビリテーションのどこでAIが活用される可能性があるのか
私が考える、リハビリテーションでAIが活用される可能性がある業務は次のとおりです。
- 書類作成全般
- 住宅改修案の提案
- リハビリ計画書の作成
- 患者さんの動作分析や姿勢分析
- 患者さんに必要な運動プログラムの提案
- 患者さんに必要な身体機能の評価項目の提案
例えば、日々のカルテから必要な情報を自動的にピックアップして書類を作成したり、患者さんの疾患や既往歴に基づいて運動プログラムや身体評価項目を提案する、といったことがAIによって可能になるでしょう。
ただし、理学療法士はAIが提案した内容をそのまま実行するわけではありません。AIの提案が正確かどうか、その妥当性を判断し、最終的に実行するのは理学療法士の役割になるでしょう。
そのため、AIが導入されても、理学療法士は現在と同じレベルの知識を学び続ける必要があります。しかし、AIのサポートによって見落としが減り、患者さんにより適したリハビリを提供できる未来が待っていると考えています。
理学療法士とAIの役割分担
AIが多くの業務を効率化する一方で、患者さんとのコミュニケーションや感情面のサポートは理学療法士が引き続き重要な役割を担います。
AIがデータ分析やプランニングを担当し、理学療法士はそれを活用して患者に直接的なケアを提供し、リハビリの進行を調整します。
理学療法士は、AIをサポートツールとして利用しつつ、患者さんに寄り添ったケアを提供し、AIではカバーできない人間性の部分の役割の比重が大きくなるでしょう。
また、直接リハビリを行うのは理学療法士であるため、高い技術レベルは求められるでしょう。知識も大切ですが、技術や人間性の部分の比重が大きくなると私は考えています。
これから理学療法士を目指す方が行っておくべきことは?
これまで通りの知識を学ぶことも重要ですが、今後はより「人間性」を高めることや、AIに慣れておくことも考えておくと良いでしょう。
学校では知識を学ぶだけでなく、リハビリや介護技術、そして患者さんに寄り添ったケアを身に付けることが大切です。国家試験に合格するための勉強はもちろん大切ですが、同時に将来どのような理学療法士になりたいのかをしっかり考え、そのための準備も必要です。
まずは、自分が目指す理学療法士になれるような学校選びを考えてみてください。「とりあえず大学」という選択肢ではなく、自分の考えや目標と、学校の教育方針や授業内容、課外活動が一致しているかを確認することが大事です。
自分の将来像に合った学校を選ぶことで、より良いスタートを切ることができるでしょう。
研究職を目指していない場合だったら、大学・専門学校どちらを卒業してもスタートラインは一緒です。自分の考えや目標とマッチしている学校を選んでみてください。